1話 はじまりの歌――

#7.osebud...

 

「はぁ……」

  自室に寝転んだ私は、天井を見つめながら溜め息をついた。ふと時計に目をやると時計の針は10時半をさしている。

「私……何してるんだろ」

  あのあと、ブレイドは私に少しだけ理由を話してくれた。

 

 

 

「今回のこの事件に――シーズがかかわっていることが分かった」

「シーズが……?」

「あぁ……」

  シーズ――それは、WDUとは正反対と呼ばれる組織。現代の魔術師とよばれる男、水樹  天童(みずき てんどう)が組織したチームで、世界中の犯罪者たちを集めているといわれている。実際には裏社会を支配している組織であり、表に出て来ることはまずない。

  また、WDUとは敵対関係にあたり、たびたび戦闘を繰り返している。

「フェイスはお前のことをつぶしたくはないのだろう――お前はまだBだ、もっと実力をつけてからシーズとは戦うべきだ……」

「……」

「Aにこい……はやくな」

 

 

 

「実力……か」

  なんどとなくその言葉が頭をよぎる。もしももっと自分が強ければ――

「はぁ……私ってほんとだめだめだぁ」

  どんなに体が成長しても……変わらない。いつまでたっても自分は弱く……そしてもろい――

「そうちゃんは何してるんだろ――」

  あの日以来宗介は、毎朝私に電話を一本いれてから音信不通になる。学校が休校なのは明日まで。もし来るのならあさっての学校では会えるだろう。

  会いたい――今、正直にそう思う。

「叶いっこない願いだと……こうしてあきらめてる私だものね」

  そうだ――今回の事件のことだけではない、宗介に対してのことだってそうだ……

 自分はいつも……何も手に入れられなくなる。自分でその希望を刈り取ってしまっているのだ。

「ふ……ふえぇ――」

 ポロポロと大粒の涙が頬をつたう。頭の中にぐるぐるといろいろなことがめぐり、そのたびに口からは小さな喘ぎ声が漏れた。

「そう……ちゃん」

 いつしか、その声は宗介の名を呼んでいた。

 窓の外は大きな月が闇夜を照らしており、肌を刺すような冷たい風が舞っている。

 それはまるで――小さな少年の心を表しているかのように。

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