1話 はじまりの歌――

3. ake pains

 

「――とりあえず、以上が俺が調べたことだ」

「ありがと、そうちゃん。ゴメンね、一気に話させちゃって」

「いや……いつものことだし、もう慣れた」

 あの後学校を出た私たちは、すぐに私の家に向かった。特に理由はないが、以前からこういう時はいつも私の家で話し合う。

 家について一段落ついたところで、宗介は事件について私が倒れている間に調べた事を教えてくれた。

 簡単に説明するとこんな感じだ。

 

○凶器

  被害者の胸に刺さっていたナイフ。全長15センチ程度の小型のナイフ。

 

○死因

  胸にナイフを刺され死亡。

 

○死亡推定時刻

  発見時間が1310分前後、推定ではその約10分程前。

 

○現場

  第二校舎二階、職員室前廊下。

 

「……」

「なんだ?」

「これだけなの?」

 資料の少なさに、私は正直落胆してしまった。たしかに、これ以上のことが分かるわけがないのだが、それでも何かあるんじゃないかと思ってしまうのは私だけじゃないはずだ……

「んー…けど、この中にヒントがあるとしたら時間だよね」

「うん?」

「だってさ、おかしいじゃない」

 そう言って私は机の引き出しから紙とペンをとりだした。

「だってね、私たちの学校の5時限目(昼休み明け)の開始時刻は1315分。死亡推定時刻が正しいとすると、少なくとも少年は開始15分前に第二校舎にいた」

「あぁ、そうなるな」

「でも、あの子は一年生で第一校舎に教室があるの。それで、第一校舎と第二校舎は中庭で区切られてるから片道5分以上かかるよね」

 私は手元においた紙にペンで時刻表を書き込みながら言う。



「普通、授業開始の15分前なんかに教室から離れた第二校舎の、しかも職員室の前なんて行くと思う?」

「んー…普通用事なければ行かないな。というか、用事もないのに職員室付近に行かないだろ」

「だよね?だとしたら、この子はなんらかの用事で職員室に向かい……そこで殺された。

そう考えるのが一番妥当でしょ?で、それで用事だとやっぱり教師に呼び出されたっていうのが、一番いい線なんじゃない?」

 私は、宗介に同意を求めるような目で見た。

 が――

「それは、俺も思ったんだけどな。それで職員室の教師に当たってみたんだが、その生徒は昼休みに職員室にきてはいないらしい。」

「え?」

「職員室で教師が生徒を呼ぶなら――普通授業終了後すぐか、昼休みなら食事が済み次第すぐ来いって言うだろ?」

「うん」

「だが、その生徒は職員室にはこなかったらしい。さすがにこの時間帯に呼び出すのはないだろうし、それにあったとしても呼び出すなら校内放送なんかを使わなければ呼び出せないだろう?」

「ぅ……たしかに」

 私の考えは、すでに宗介も思って調べたあとだった。だが、これで完全にふりだしに戻ったようなものだった。

「それに……時間で言えばもうひとつある」

「?」

 宗介が、怪訝そうな表情になりながらつぶやく。

「お前……その子に告白されたのいつだ?」

「ぇ……」

「お前は、昼食の前に呼び出しだったよな?それから、お前はすぐに俺にその告白について話した」

 そういわれてみて気づく。確かに、呼び出しを受けたのは昼休み開始すぐに校舎の裏へだった。

 そのことが原因で、私は昼食をとっていない。

「それで、お前がもどってきたのが確か50分かそこらだった。俺は食事を終えていたからな」

「うん、だから私は食事をしてないんだけど……」

「お前は、告白を断ってすぐに戻ってきたのか?」

 必死に記憶の糸をたどる。

「うん、私はすぐに戻った。」

「ということは、移動に五分程度かかったと仮定して、告白が終わったのは45分前後ってことになる」

「うん」



 宗介が書きくわえて、移動を開始した時間がうめられた。

「すぐに出たとして、校舎裏からなら教室より少し遠いくらいだから50分には職員室の前につける……か。だとしたら、そこまでおかしい時間じゃないんだがな――」

「うん」

「ただ、その時間だと教師に食事が済み次第来い、なんて言われていたのなら、ちょうどいい位の時間ではある……が、普通教師に呼び出されている状態で告白なんてしないだろう?」

 理論上、私の考えは筋を通さないものとなってしまった。

 

「はぁ……この事件、解くには骨が折れそうだわ……」

「――だな」

 私は、自分の置かれた現状に半ば呆れかけていた――

 

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